スローカーヴ


乾いた冬の西日が
円錐の右のほうを照らす
赤い頬の女の子は
気がつけば、ずっと遠くに沈んでいた


ゆるやかな蛇行を繰り返して
丘の上から海辺の家まで帰る
淡いオレンヂ地のカンバスが
やわらかい厚みと、おだやかな温もりをもって
そこにあった


陽が沈んだのち
浜辺から見上げた三日月は完成されていて
わたしは、砂に埋もれた巻貝の背中をさする
暗がりのなかのヴィーナス像が
病的な白さを恥ずかしそうに隠していた


風は、どこから吹いてくるのかは知らないが
丘の上の風車を静かに動かす
円柱の白いモニュメント
その影がゆっくり角度と長さを変えていく
風の音に耳を傾けるくらいの余裕を
舌の上でしばらくは転がしていられる


赤い頬の女の子は
今ではスローカーヴを描き
蛇行する道を下ってゆく
わたしは寒空の三日月を指でなぞる
木造の風車がきい、きい、と温度の低い声を発し
あたたかい風が世界の角を減らしていった


乾いた冬の西日が
今日も音もなくそこに現れる
オレンヂの海に立てた旗が
わたしを咎めるようにゆっくりと、風に靡く


重力が10分の1だったら
さっき放り投げた小石は
スローカーヴを描いて水平線へ消えてゆくだろうか
わからないわたしは
波のゆらぎに少しこころを任せることにした



 しぇる
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by sheru19 | 2007-01-14 21:38 |  

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