イン・ラブ



呼吸は苦しいが しなければならなかった

沈んでゆく身体は 思いの外軽やかだった

私の目に映るのはブルー

意識の果にあるのもブルー

壁にかけられた淡い色の花の絵は

家を出るときに忘れてきたのだ

口をかたくふさいで 昨日とあなたを忘れた頃には

私は 丘の上で深呼吸をしているのだ

それは 日常のようでまた 私のからだが途絶えた後のよう





青空を吸い込み続けながら 朽ちたい

あたたかい海の規則的な冷たさのなかで果てたい

死は暗く重く また 愛も暗く思い

「冷たい」と呟いただろうか

いや 唇はあかく 血液はぬるい
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# by sheru19 | 2007-08-10 09:54 |  

suiren




もう恋愛はお休みだと言った
不器用な手で
蓮の花を閉じようか
誰から否定されたわけでもなく
他でもない
あたしが否定するのだ





絶対零度の孤独は
存外生温いものであることに
多くの人が気づいていて当たり前な世界
それでいい、それがいい
そう、それが





雨粒が葉の上で踊ってから
花弁にそっと口づけをする
どんより曇り空の背景が
疑念を消し去るほど似合っていた





どうしたら明日が来て
どうしなかったら、明日はないのか
答が出ないまま
今日とも明日ともつかない毎日の
天気予報を書き続けている





もう、恋愛はお休みだからといって
明日の天気は変わるのだろうか
そして夜は来るのだろうか
あたしの視界は
極めていつも通りなのだけれど
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# by sheru19 | 2007-06-23 08:23 |  

素敵なはじまり



あなたの背中は、灰色の空を映す池の様に静かで

私はそこに片腕を沈ませた

池は、人の身体にしては冷たくて
    水の温度にしては温すぎた

ゆっくりと腕を抜くと、波紋が無音のうちに響いた

そんな病的な交わりは、素敵なはじまり

誰も知れない、二人きりのステップへ

かろやかに、しずかに、乾燥した部屋で

無機質に、けれども、吐息だけは

多くの湿度を含んでいて

あざやかに裏切られた気分



紫の花にうつ五月雨

灰色の空の下の色彩





                                しぇる
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# by sheru19 | 2007-06-01 00:22 |  

黒の故障



窓から切り取られた空が
急に私たちの背中を襲った
楽譜から切り取られた音が
急に私たちの中からくつくつと毀れ始めた

黒い私が汚れていく
あっけらかんとした皐月の風とは裏腹に
黒が訴訟を起こし続ける
「キモチワルイ」という声は、本当に聞こえたのだろうか

黒も私を犯し続ける
まだ湿気を帯びない部屋の空気が
かえって私の癇に障った
黒い私が汚れ続ける

何になりたいのだろうか
何が雪を溶かしたのか
何が、あの奇麗な旋律を壊したのだろうか
音が私たちから乖離していく

壊した花瓶の破片を集めるように
壊れた心の破片を集めている
花を飾って、モノクロの
あなたが浚って、真っ黒の

数時間の沈黙の後
古い絵画のなかの手のように
私の手が病に脅かされていた
そしてこの侵食は終わらない



                          しぇる
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# by sheru19 | 2007-05-07 15:47 |  

スプリンググレー




からっぽの洗濯機を
一日中まわし続けた
午後は簡素で
夜は嫌気が差すほど長い


ハスキーボイスが匂いになればいいなあ
願う少女が摘む春の花
薫る風が生あたたかくて
高揚すると同時にわたしの中の冬が眩暈


目覚めたら
雨の音が聞こえたから
カーテンを開ける気は起きない
黄色の長靴が似合う、少女じゃないの





       しぇる
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# by sheru19 | 2007-04-13 21:21 |  

天気雨が多い~近況報告~

新しい記事を投稿するのは本当に久しぶり。
自分のブログだというのにしばらく開いてもいなかった。
そんなだから、訪問者もほとんどいないのは当たり前。

昨日、ふいに開いたら新しいコメントが寄せられていて懐かしくなった。
また、詩というツールを借りて表現を試みてみたいと思った。

近況報告は誰に向けてしているのか、甚だ疑問だけれども
以前お世話になっていたサイトが細々と(失礼かな)続いており、またそこで知り合った方々がそれぞれの表現を続けているということを知ったので
気が向いたら誰か、僕のことを覚えてくれている人が訪れてくれるのではないかなあ、と期待したりしているのである。

そんな近況だが
天気雨や夕立が多い。
というのは季節柄なので、ようやく仙台の地にも春がやって来たのだなあ、と感じる。
昨年度はプライベートでも、それ以外の部分でも忙しすぎた気がする。
怒涛のようにバイトやらしていた。
それはそれで、色々と充実していたし、得がたい経験をすることもできたのでよかったと思う。
今年は、いつの間にか大学も3年目を迎えた。
今年度の後半からは就職活動が待っている。
今が、最後の蓄え時のように思っている。
今年もそれなりに忙しくなるだろう。
しばらくは新しく詩作というものをすることはできないかもしれないけれど
他愛もないことを吐きにここを使うような気がする。

詩に関しては、しばらく過去のものをアップしていこうと思う。
データとして残っているものだけになるが。

今日から新学期スタート。
こういう始まりの空気の匂いが好きだ。
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# by sheru19 | 2007-04-09 13:22 | 上の空言  

スローカーヴ


乾いた冬の西日が
円錐の右のほうを照らす
赤い頬の女の子は
気がつけば、ずっと遠くに沈んでいた


ゆるやかな蛇行を繰り返して
丘の上から海辺の家まで帰る
淡いオレンヂ地のカンバスが
やわらかい厚みと、おだやかな温もりをもって
そこにあった


陽が沈んだのち
浜辺から見上げた三日月は完成されていて
わたしは、砂に埋もれた巻貝の背中をさする
暗がりのなかのヴィーナス像が
病的な白さを恥ずかしそうに隠していた


風は、どこから吹いてくるのかは知らないが
丘の上の風車を静かに動かす
円柱の白いモニュメント
その影がゆっくり角度と長さを変えていく
風の音に耳を傾けるくらいの余裕を
舌の上でしばらくは転がしていられる


赤い頬の女の子は
今ではスローカーヴを描き
蛇行する道を下ってゆく
わたしは寒空の三日月を指でなぞる
木造の風車がきい、きい、と温度の低い声を発し
あたたかい風が世界の角を減らしていった


乾いた冬の西日が
今日も音もなくそこに現れる
オレンヂの海に立てた旗が
わたしを咎めるようにゆっくりと、風に靡く


重力が10分の1だったら
さっき放り投げた小石は
スローカーヴを描いて水平線へ消えてゆくだろうか
わからないわたしは
波のゆらぎに少しこころを任せることにした



 しぇる
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# by sheru19 | 2007-01-14 21:38 |  

breathe

世界の隙間から
気まぐれに染み出しているその呼吸音に
僕らはもう少し
耳を澄ますべきなんだと思う



それは
日々の雑踏にかき消されているかもしれない
けれど
「聞こえる」とか「聞こえない」とかいう問題ではなく
「そのように聞こうとする」ことが
今より半歩、生き易い呼吸法になる



悩まない少年は悩めない朝を迎え
悩めない少女は悩もうとしない夜を抱く
二十歳の僕らは境界線のないプールで
息継ぎの仕方がわからない



入り組んだドアを叩いては
返事がなければ進めない
そんなところにだけ妙に耳が利いて
僕らは僕らの呼吸を忘れている
世界が音をたてるのかはまだ疑問だけれど
僕らの呼吸が世界の音であってもいい



後ろから
あなたの滑らかな背中を抱いて
耳を澄ませてみる
丸いらしい世界の長方形の部屋で
孤独な呼吸音が、それでも
不協和音で在り続ける



このまま鳴り止むまで
単音になって
そして無音になる頃
まだ世界が音をたてるのかはわからないまま
世界のどこかで横たわっている
そう
宇宙の中心はどこであるとかは
まるでどうでもいいかのように




 しぇる

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# by sheru19 | 2007-01-13 12:41 |  

オレンヂの崩壊


奏でれば奏でるほど
音ではなくなっていく段階
私の心とか、右腕とか
背中とか、左脚とかに絡まっていく思いは
白い雲が夕焼けに染まっていくように
そっと、分らなくなってしまったらいい
そして雲は風に流されてゆけ



声に出せば声に出すほど
言葉ではなくなっていく段階
いっそ唇を塞いでしまいたい
思いが世界のどこを巡って
誰かに辿りつくか想像するなど
あのオレンヂが崩壊した後の世界を作るみたく難しい
嘗ての肌のぬるさや
心音の意図、部屋の湿度を両手で手繰り寄せていく



見つめれば見つめるほど
世界とあなたが見れなくなっていく段階
ただ、糸を巻き続けて
ただ、オレンヂの崩壊を恐れて
同じような日々の羅列に
ため息をしている少女へ、僕から
「明くる日まるっきり世界が変わるっていることもあるんだよ」
雲が浮かんでいたとしても




 しぇる
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# by sheru19 | 2007-01-10 22:57 |  

二枚入りビスケット

ウェイトレス
彼がそう言うと
世界は彼で、彼女はオブジェにすぎなかった
わたしはきっと、アクセサリーだ


それは、哀しい自信であり
空しい真実だった
彼がそういう人間だということは了解しているけれど
わたしもきっと、そういう人間だ


二枚入りのビスケットの袋が
不幸な音をたてる
運命共同体ではない
かたっぽが半分に割れて、もうかたっぽがひび割れ程度で済むこともある
愛とはきっと、袋のなかの空気だ


「愛して」と無理なお願いをする
やっぱり彼はいつものように
「愛はするものなのか?」と無形の声で問いかける
ピアスは、輝かない


「ウェイトレス」
もう一度彼が向こうに立っているオブジェを呼ぶ
世界は彼で、わたしは何だろう
わたしが世界なら、彼は何だろう
ビスケットの袋を、おもむろに広げたくなったんだ
そのとき




 しぇる



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ちょうど一年前に書き上げたもの。
女性目線で書いてみた(偶にする)。若干小説を書くことを齧った時期であり、こんな描写が懐かしい。
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# by sheru19 | 2007-01-07 17:18 |